十 河 隆史
十河隆史:瀬戸内海を見渡す丘の陶芸家が生み出す、温もりのある器
岡山県玉野市の丘の上、瀬戸内海を一望できる場所に、陶芸家・十河隆史さんの工房「T・ポタリー」はあります。1966年生まれの十河さんは、岡山大学大学院で美術教育を学んだ後、滋賀県陶芸の森で研鑽を積みました。2000年には米国ノースカロライナ陶芸センターを訪れ、国際的な視野を広げた経験を持ちます。
粉引と白釉が織りなす、モダンで温かみのある世界
十河さんの作品の特徴は、何と言っても「粉引」と「白釉」の技法にあります。粉引とは、素地に白化粧土を施し、その上に透明釉をかける伝統的な技法。十河さんはこの技法を用いながら、あえて手指の跡を残すことで、機械では決して出せない温かみと人間らしさを表現しています。
また、白釉を用いた作品は、軽やかでありながらも存在感のある美しさが特徴。手捏ぎに加えてモデルを作る技法も取り入れ、現代の暮らしに調和するモダンな形状を追求しています。
日用器を中心に、暮らしに寄り添う作品づくり
十河さんの制作の中心は、茶碗、湯呑み、皿、カップなどの日用器です。ほぼすべての作品が手作りであり、一つひとつに異なる表情があります。さらに、花器や建築用の顔盆など、幅広いジャンルの作品も手がけています。
「毎日の暮らしの中で使われる器だからこそ、手に取ったときにほっとするような温もりを大切にしたい」という十河さんの思いが、作品の随所に感じられます。
金継ぎで器の命を繋ぐ「継いの日」
十河さんの活動で特筆すべきは、月に1度開催される「継いの日」です。これは、購入者から寄せられた欠けやヒビのある器を、金継ぎで修復するサービス。単に修理するだけでなく、器の歴史や思い出を大切にしながら、新たな命を吹き込むこの取り組みは、多くのファンから支持されています。
陶芸教室で次世代へ技術を継承
十河さんは、定期的に陶芸教室を開催し、初心者から上級者まで幅広い層に指導を行っています。自身が培ってきた技術や知識を惜しみなく伝えることで、陶芸の魅力を広める活動にも力を注いでいます。
国内外で高く評価される作品
十河さんの作品は、オンラインショップや実店舗で購入できるほか、国内外の展示会にも積極的に参加しています。粉引の手指印を残すテクニックと、白釉の軽やかな温もりは、多くのコレクターや愛好家から高い評価を得ています。
瀬戸内海の美しい風景の中で、家族と共に暮らしながら作品づくりに励む十河隆史さん。その手から生み出される器は、使う人の日常にそっと寄り添い、豊かな時間を紡ぎ出してくれることでしょう。